森の中での、隠れん坊から

9月の森

9月の森

空間のある場所

空間のある場所

昨年から続く新型コロナウイルス感染症拡大は、いろいろな仕事の業務や人の心に何かしらの影響を与えているのではないでしょうか。
新卒で入社し、2年半が経った彼女。振り返れば、働いてきた時間の半分以上は、通常業務に加え、コロナで生じたイレギュラー業務が増えたままになっていたそうです。当然ながら残業は多く、同僚や友人とも会えないがためにモヤモヤした気持ちばかりが募り、何とかしたいと思って、この森林散策カウンセリングを始めたそうです。
さて、今日で3回目の森歩き。彼女はどんなことを、この森で見つけるのでしょうか?

―・・・今、仕事があるだけでもありがたいんですが・・・・・・、

――ええ。

―去年から、職場と家の往復の毎日で・・・目の前の業務をとにかくこなすだけで精一杯なんです。

――大変な毎日が続きますね。

―次から次へと仕事がやってきて・・・最近、どうしてこの仕事をしているのか、そのことすらも分からなくなってきてしまったんです。

と、彼女は忙しい現状と、やるせない今の気持ちを静かに話し始めました。疲れてもいるせいか、ゆっくりした足取りで森の中を歩いていくと、ちょっとした空間に差し掛かりました。ちょうど彼女の話もひと区切りつきそうだったので、それを待った後、カウンセラーは問いかけてみました。

――ひと息ついて、この場所で、寝っ転がってみませんか?

―えっ、この場所ですか?

――はい、この場所で。どうでしょう?

突然の問いかけに、彼女はやや驚いた様子となりました。けれども、すぐ笑顔になって、カウンセラーから受け取った敷物を森の中に広げ始めました。

――ほんの10分間ですが、横になって、ゆったりした時間を楽しみましょう!

―はい!

10分間が経ち、その場から起き上がると彼女は、

―懐かしかったです!

――懐かしい?

―子どもの頃を思い出しました。あ~、こういう森の中でよく遊んだなあーって。こうやって寝っ転がったり、隠れん坊(1)したり、秘密基地を作ったりしていたなぁ~って。

――それは、楽しかったでしょうね。

―隠れん坊なんか、鬼になったら最後、なかなか見つけられないんですよ。

――隠れる場所がたくさんありますものね(笑)。

―隠れて待っている方も長い間見つからないと、だんだん不安になったりして(笑)。

――そうなんですね。

―特段、すごい遊びをしている訳じゃないんですけど、とにかく友達と一緒に遊んでいることがすごく楽しかったように思います。今思い出しても、なんでそういう遊びが楽しかったのか・・・・・・・・(笑)。ん~~~、でも・・・・、もしかして・・・・今、こういう楽しさを、仲間と味わえないことが辛いのかな・・・・・・・・・・・・・・・・・。

会社に来て、仕事をして、家に帰る。仕事だから、このスタイルが当たり前だと思って・・・、ある程度は我慢できていたんですけど・・・・、今は苦しいです・・・・・・・・・・・・・・。そう言えば、コロナ前は職場の先輩達とも会社帰りに、飲みに行ってましたねっ!仲間と楽しい時間を過ごしたいです!

今、自分がやりたいことを言えた彼女は、すっきりと晴れやかな表情になりました。
一度、忙しい日々のサイクルに身を投じてしまうと、気づかぬうちに心身共に疲れ果て、自分の大事にしていたことを見失いやすくなるのではないでしょうか。彼女は、今回の森歩きのなかで、友達と満ち足りた時間を過ごした子供の頃の経験を思い起こしました。まだ、彼女は今の忙しい状況のなかで、仲間と過ごす具体的な解決策は見出せていません。ですが、この気づきは、これから仕事を続けていくなかで大切な糸口になるように思います。
少しでも楽しい時間を過ごせる方法を考えて行きましょうね!

 

ブログ執筆者 竹内啓恵
https://jumoku.co.jp/info/b201906-2/

 

~森のメモ~

(1) 隠れん坊
子供の遊び。数人が物かげに隠れ、鬼役になった一人がそれを探し出す遊び。