森の中で動いたことで!

恋人同士?

恋人同士?

片想い?

片想い?

孤高の人?

孤高の人?

いろいろな制限が緩和され始めると、人とふれあう機会も少しずつ増え始めるのではないでしょうか?
今回の彼女は、今日が5回目の森歩き。数か月前、彼女の会社では、コロナ禍でも快適に過ごす社員向けプロジェクトが立ち上がり、そのメンバーに彼女も選ばれたそうです。この数か月間、本務と並行してプロジェクト業務を行うのは、想像以上に忙しかったそうですが、充実した日々を送ることができたようです。会議は、オンラインで行われてきたとのことですが、最近、会議が終わるとすっきりしない気持ちになることがあるそうです。
さて、彼女は、今日の森歩きでどんなことに出会うのでしょう?

――その社内プロジェクト会議は、どのくらいの頻度で行っているんですか?

―1週間に1回程度です。メンバーは、それぞれ違う部署から1名、比較的若い社員が選ばれて、6人で話し合っているんです。

――そうなんですね。

―通常業務に戻ったし、そろそろメンバー達と直接会って話し合った方がいいんじゃないかなと思うんです。

――何かそう思ったことがありましたか?

―・・・・・・、なんとなく・・・・・・、表面的にはメンバー同士が打ち解けているようにも感じるんですが・・・、打ち合わせが終わった後に・・・気持ちがすっきりしないというか、モヤモヤしたものを感じるんですよ・・・。

――なるほど・・・。

―オンライン会議は音声だけで話し合うんじゃなくて、全員の顔を画面に表示して、話し合うんです・・・・・・。しかも全員、ちゃんと正面を向いているんですけど・・・。

――ちゃんと正面を向いてるんですね。

と、そこでカウンセラーは前方にある2本の樹木へ視線を向けてみました。
すると彼女も、その視線にならって前方を見上げました。

―あ!あの2本の木!お互いに寄り添っている感じで、恋人同士みたいに見ますね!

――本当!仲むつまじい様子に見えますね。

―ふふふ♪

そして、カウンセラーは少し歩いた後で、今度は後ろを振り返り、さっき眺めた2本の木へと視線を動かしました。それにつられて彼女も振り返ると、

―えっ!?さっきの姿と全然違う!今は、低い方の木が、あの高い木を追いかけている感じ。今度は片思いのよう。

――片思いだったんですね。もう少し進んで見てみましょうか!

―はい!

そして、森の中へと歩き進めた後で振り返ってみると、

―あれ?1本だけになった?高い木だけが見えて、低い木が森の中に溶け込んじゃったような・・・(驚)!

――そうですね。

―不思議ですね。同じ木なのに・・・・・・木は動かないのに、私たちが動くと、木の見え方が違う。

――違う角度で木を見ただけなんですけどね。

―そうかあ!

と、彼女は何か、気づいたようです。

―オンラインでメンバーに会ってはいたんですけど、正面を向いている姿しか見たことがないんですよ。今まで、メンバーが動いている姿や、横顔や後ろ姿を一度も見たことがないんです。ん・・・・・・、それだけじゃないなあ・・・・・・。あ!・・・、表情の変化だったり、息づかいだったり・・・近くにいたら感じるはずのちょっとした何かが伝わってこないんです・・・。それって、何か物足りないないっていうか・・・、もう少しメンバーと関わっていきたいんだなって思っている自分がいるんだと思いました。理解したいというか、プロジェクトを気持ちよく進めていきたいというか・・・。オンラインは便利だけれども、直接会うことも大事なのかもしれませんね。次回の会議で、メンバーに提案してみようと思いました。

と話した彼女は、すっきりとした表情になりました。

樹木の印象は、それを見る場所や角度によって異なります。それに気づくには、私達が動いて樹木を見に行く必要がありますね。画面越しに出会う人との関わり合いもこれと少し似ている点があるのかもしれません。私達が思うように移動できない時やお互いに遠くにいる場合などは、オンラインを利用したツールはとても便利なものですが、画面越しに映る相手の姿には限りがあるようです。相手の息づかいや指の動き、椅子に座る姿勢や足の組み方など、私達が動いてみないと、ちょっとした情報は得られにくいのではないでしょうか。このコロナ禍だったからこそ、同じ空間で同じ時間を人と共有する生身のふれあいが必要なんだろうと思います。来月も、この森を一緒に歩きましょうね。

 

ブログ執筆者 竹内啓恵
https://jumoku.co.jp/info/b201906-2/

 

~森のメモ~

写真の樹木はアカマツ(マツ科マツ属 Pinus densiflora)です。アカマツについては、こちらを参照してください。