森の外からと、中からでは!

テレワークが終了し、毎日職場へ出勤する人は増えてきているのではないでしょうか?
今日、7回目の森歩きをする彼女は、入社と同時にテレワークが始まり、2か月前まで自宅で仕事をしてきました。この数か月間で初めて社内の色々な部署の人たちに会い、会社で働く人の多さに驚いているようです。しかし、職場で毎日顔を合わせて働くことに慣れていない彼女にとって、上司や同僚らなど、生身の人たちとの関わりや接し方に戸惑いも感じているようです。
今日の、色鮮やかな森は、彼女にどんなことを伝えてくれるのでしょう?

―会社からも、この森が見えるんですよ。

――そうなんですね。

―昨年は在宅だったこともあって、職場の周りに何があるのか分からなかったんです。でも、この森歩きを始めて、出社するようにもなって、少し自然に目が向くようになりました。

――なるほど、緑を意識するようになってるんですね。

―(笑)・・・と言っても、実は毎日が精一杯で・・・。外を見る余裕もなくて・・・。たまたま昨日、「明日は森歩きだなあ」と思ったので外を見たら、一面色づいていたのでびっくりしました。

――そうだったんですね。

―職場にはすぐ隣に先輩が居るので、困った時には何でも聞ける状況なんですけど・・・、

と、彼女は職場の人との関わり方に戸惑っていることを話しはじめました。実はテレワーク中の1年半に、彼女が上司や同僚と対面で会ったのは数回程度と少なく、もっぱら仕事の相談や打ち合わせは、メールかビデオ通話で行っていたそうです。分からないことがあれば、先輩にメールで問い合わせ、しばらくするとその返事をしてもらって問題を解決していったそうです。その時は、相談する先輩の状況など一切考えていなかったそうですが、職場で仕事をし始めてみると、上司や先輩らが忙しそうにしているのを見ると、どのような言葉で、いつ声をかけていいのか分からなくなってしまい、仕事がなかなか進まなくなってしまったそうです。

と、森の中を話しながら歩いていくと、色鮮やかな明るい場所が見えてきました。カウンセラーは、その方向へ歩いていき、葉が赤く染まった樹木の前で立ち止まりました。そして彼女も、カウンセラーが見上げる先へと視線を移し、見上げると、息をのみ、瞳を大きく開いたまま、黙ってしまいました。
そして、

―すごいきれい・・・・・・。こんにも紅葉が綺麗だったとは・・・・・・。うわぁぁぁ・・・・・・。

――とっても綺麗ですね。

―この赤い木は「モミジ」の木ですか?

――はい、「イロハモミジ」です。

―緑色だった時はこの木がモミジだってことも分からなかったです。赤くなったから分かったけど・・・それにしてもこんなにも紅葉が綺麗なものだったとは・・・・・。

――自分の足で森の中を歩いてみたからこそ、味わるものですね。

―「紅葉狩り」という言葉があるので、紅葉が綺麗だとは思っていましたが、こうやって森の中から見ると、その美しさや輝きを全身で浴びるというか、今まで思っていた綺麗さと違いますね。今までの紅葉はいったい何だったんだろう?と思いました。

――同じ森でも、紅葉を、外から見るのと、中から見るのでは全く違う印象がありますね。

―はい、全然違います・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。森の中を歩かないと、この綺麗さの感動が分からないです・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。これって・・・・・・・人間でも同じことが言えるような?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。在宅勤務が終わって、初めて職場の先輩と毎日顔を合わせて仕事をするようになり、先輩の忙しそうな姿を見ていたら、ものすごく怖い人だと思ってしまったんですよ。でも、質問すればちゃんと教えてくれるし、外見から怖い人だと判断していましたけれど、今日、ここに来て、私は先輩の中身をちゃんと見ていたんだろうかと思いました。話してみないと、先輩の人柄も分からないし、仕事も進まないですね・・・。

と、語った彼女は、人と関わることに何かしらのヒントを見つけられたようです。

パソコン上で見る紅葉の写真やテレビで放映する紅葉狩りの番組は、いくらそれらが綺麗であっても、実際に私達がそこへ出かけて体験しなければ、それらの本当の美しさは分からないのです。それは今日の彼女が気づいたように、人との関わり合いについても同じことが言えるのではないでしょうか。オンラインツールは、とても便利な機能です。ですが、長い間、それに頼った人との関わり方を続けると、人の持つ本当の良さや生身で触れ合う感覚が分からなくなってしまう怖さもあり、それだけにバランスよく使うことが求められるように思います。
あともう少し、森の中で、色々なことを体験していきましょうね。

 

ブログ執筆者 竹内啓恵
https://jumoku.co.jp/info/b201906-2/

 

~森のメモ~

イロハモミジ(ムクロジ科カエデ属 Sapindaceae Acer palmatum)です。こちらを参照してください。