落葉した森で。

すっかり落葉した森には、さまざまな樹皮が覗いて見えます。
(左の写真から、「冬の森」「コナラ」「アカマツ」「リョウブ」)

 

一年前と比べると、今年は人と接する機会がだいぶ増えたのではないでしょうか?嬉しい反面、ある程度、毎日決まった人と関わっていくと、モヤモヤすることが時々起こるのだろうと思います。
今日、一緒に歩く彼女は、この秋の人事異動で新しい部署に移り、毎日出社し始めました。異動する前は、在宅勤務を推奨する部署だったこともあり、人恋しさと入社4年目の自分自身を見つめ直したいという気持ちから、この森林散策カウンセリングを始めました。先月は、同僚に毎日会える部署になったことが嬉しかったと話してくれた彼女でしたが、今日はなんだか浮かない表情でやって来たようです。3回目となる森歩き。彼女はこの森で何を見つけるのでしょう?

―先月と、今月では、森の様子が全く違いますね。

――本当ですね。

―葉っぱがなくなって・・・寂しい感じがすると思ったんですけど・・・、明るく、すっきりした感じがします!

――そうですね。

―きれいな青空が見えるし、モヤモヤしていた気分が晴れて、気持ちいいです!

――それは良かったです・・・。その・・・何かモヤモヤすることが、最近ありましたか?

―あ・・・、

と、彼女は、思わず出た自分の言葉に驚きながら、今の心境を語ってくれました。彼女のいる部署は、全員、職場に行かないと仕事ができない業務内容だそうです。最初の1か月は、毎日同僚とちょっとした世間話をすることや、随時、仕事の相談ができることが嬉しかったそうです。しかし、2か月も経つと、同僚との距離が近くなり、お互いの意見を率直に言い合うようになったそうです。すると、時々、意見の食い違いで気まずい雰囲気になり、それが積み重なると毎日その同僚と顔を合わせることがしんどくなっていったとのことでした。

――なるほど、在宅勤務と、職場勤務では、モヤモヤの種類が異なったわけですね。

―はい、在宅勤務だった時には、同僚のことがよく分からなかったことに対してモヤモヤしていましたけど、今は、同僚をよく知るようになったことで別のモヤモヤが出てきたんです。特に、打ち合わせで意見が違った後の雰囲気は・・・。

と、そこで、カウンセラーは周囲の樹木に触りながら、1本ずつ順番に見つめ始めました。彼女もそれに倣い、幹を触りながら樹皮を見つめます。

―へぇーー-、こうやってじっくり木を見たり、触ったりするのは初めてです。案外、凹凸があるものなんですね。これは、縦に筋が入って、ごつごつしています。

――はい、それは「コナラ(上写真左から2枚目)」という樹木です。

―今度は、カサカサした鱗のようなものが並んで見えます。ちょっと赤く見えるような・・・。

――今のは「アカマツ(上写真右から2枚目)」です。

―あそこにある木も面白い模様をしてますよ!薄いピンク色のまだら模様がところどころにあって、迷彩柄のようにも見えます。

――あれは、「リョウブ(上写真右)」という名前の樹木です。

―リョウブ、アカマツ、コナラ。全部違う木なんですね。今まで気にして見たことがなかったからか、木はどれも同じような形や色だと思っていました。その木も、あの木も、模様が違いますね。

――ほんとうに、色々な模様の木がありますね。こんな風にこの森を見てみると、一種類の樹木だけではなく、色々な種類の樹木で成り立っているのが分かります。そして、それぞれの樹液や果実を目的にやってくる昆虫や動物もいるんですよ。また、万が一、ある種類の樹木が病気になったとしても、病気にかからない別の種類の樹木もあるので、森全体で被害を受けずにすむ可能性は高くなっていくのです。様々な困難にも乗り越えやすくなりますね。

―なるほど!・・・・色々な樹木があるということは、人に置き換えても言えることですね・・・・意見が違っていいんですね。色々な人がいる方が、色々な考え方が出てくるし、職場で何か問題が起きた時にも、色々な方法で対処していく可能性があるってことで・・・・・・。意見が違うから気まずくなるっていうのは・・・う・・・んんん・・・。在宅勤務のせいにしちゃいけないけど、いつの間にか自分の世界だけで過ごすようになっていたのかもしれません・・・。

と、彼女は、自分自身に納得した表情になりました。

一般的に、自分が他人の意見と同じだったり、他人が自分の意見に同調してくれたりすると悪い気分はしないものです。大勢の人がいれば、その分色々な意見や考え方もあり、時にそれらで軋轢が生じることもあります。しかし、何か問題が起きた時には、一つの方法で対処できなかった場合に色々な意見があると、さまざまな方法で解決への糸口が見つかっていくのではないでしょうか。人との関わり合いは、時に大変なこともありますが、バランスの良い人間にさせてくれるのだと思います。
これからも、色々なものを森で見つけていきましょうね。

 

ブログ執筆者 竹内啓恵
https://jumoku.co.jp/info/b201906-2/

 

~森のメモ~

コナラ(ブナ科コナラ属 Quercus serrata
幹はほぼ直立し、樹形は不ぞろいの高木。北海道~九州に分布し、雑木林や山地の代表的な樹木です。

リョウブ(リョウブ科リョウブ属 Clethra barbinervis
小高木。北海道~九州に分布し、雑木林や山地の乾燥した場所に生えます。樹皮がはげて、まだら模様の木肌は独特です。葉は、コナラの葉にも似ていますが、中央の葉脈や葉柄が赤みを帯び(そうでない場合もある)、鋸歯が細かく数が多いです。