森からの冬のプレゼント

ロウバイ(ソシンロウバイ)(1)の花 

1月も、大寒を過ぎると、日がちょっぴり長くなってきましたね。しかし、一年の中では、最も寒さの厳しい期間が始まりましたよ。
毎年、この時期に森歩きをしていると、彼女達は申し合わせたように、「今まで、冬の森へ行っても、何もないと思っていました」とおっしゃいます。そして、今日一緒に歩く20代の彼女からも、前回の森歩きで同じようなことをおっしゃっていました。おそらく、このブログを読み続けている皆さんなら、「いえいえそんなことはないですから!」と思っていることでしょう。
さて、6回目の森歩きとなる彼女ですが、これからどんな風に感じるのでしょう。

――今日は、いいお天気ですね。

―はい、とっても気持ちがいいです!真夏から、この森林散策カウンセリングを始めて、今回でちょうど真逆の季節になりました。こんなにも、半年間で景色が変わるのかと、びっくりしています。

――そうですよね。はじめた頃は、森の中が緑しかない状態でしたものね。

―はい!それが秋になると、赤や黄色の葉っぱに変わり、あんなにもカラフルな森になるとは思いも寄りませんでした。それから、少しずつ葉っぱが落ちていって、今では、すっかりなくなってしまいましたよね。

――森の中はだいぶすっきりしましたね。

―はい・・・、実を言うと、カウンセラーさんが毎回ここで、「先月の景色と変わりましたね」とおっしゃっていただいたおかげで、私は、その変化を探すようになっていったんです。もし、そういうことをおっしゃってくださらなかったら、今日の森の変化にも気づいていなかったと思います。万が一、気づいたとしても、「こんな様子になるんだ」と一瞬思っただけで、それ以上何も意識しなかったと思います。

――そうでしたか。

―・・・・・・最近、自分について、いろいろと振り返るようになってきたんです・・・。今まで、何に対しても、「なんとなく」という気持ちで、その場をやり過ごしてきたなあと・・・。いつでも、今、自分の目の前にあるものが全てで、それが以前と違っているとか、おかしいなあとか、その反対に、前よりも良くなっているとか、こういうことを考えずにいたんです。それでも、「変だな?」と思うことも、たまにありましたけど、それを言ったところで、その場の雰囲気を壊してしまったり、波風を立てたりしてはいけないなと、思いこんでいたので、それ以上、追及するようなことを極力しないようにしてきたんです。

と、彼女は、はじめて、自分自身について語りはじめました。半年前、この森林散策カウンセリングに申し込んだ時の彼女は、「とりあえず健康になりたい」とだけおっしゃいました。当時、彼女の顔色は悪く、体調はあまり良くない様子でした。ですが、一緒に森歩きをしていくうちに、彼女は、植物の生きる姿に興味を持ちはじめ、毎月の森歩きで自然を知っていくことが楽しみになっていきました。すると、徐々に元気が回復し、それと同時に、心の中で得たいの知れないモヤっとするものがあることを感じはじめたのです。

―思えば、学生の頃から、自分の気持ちを優先させず、ずっと周りの人達に合わせた行動をとってきました。それだと、自分が目立つこともなく、学業でも、仕事でも、すんなり事が進んだんです。でも、ちょっとずつ、責任のある仕事を任されるようになってきたら、自分でどう進めたらいいのか分からなくなってきたんです。頭の中が真っ白になると、とりあえず上司に相談して、解決策を教えてもらい、その場をやり過ごす・・・というか、取り繕うようなパターンを繰り返すようになりました。それも、だんだんと限界を感じるようになって・・・、という時が半年前だったんです。

――なるほど・・・、それはけっこうきつかったですね。

―はい・・・。でも、やっと、自分がどうしてそういう状態になったのか、理解できるようになってきました。

と、彼女の話がひと区切りした時、カウンセラーは、小さな黄色い花の咲く樹木の前で立ち止まりました。すると、

―ん~~~?なんか甘い香りがしません?

――はい、この香りをちゃんと嗅ぎ取りましたね!

―ふふ(笑)。もしかして、この黄色い花からしているんですか?

――はい、その黄色い花の「ロウバイ」という樹木から香っています。

―へぇ~、見た目もかわいいですね♪花びらの質感はツルツルで、透明感もあって・・・。梅の花にも似ているような。

――よく観察されましたね!まさに、おっしゃる通りで、花びらが蠟細工のように見えることと、ウメの花にも形が似ていることから、「蝋梅(ロウバイ)」という名前が付けられたと言われています。

―名前の由来も知ると、より親近感が湧きますね!真冬にもかかわらず、目と鼻を楽しませてくれるとは!

――まさに、冬からのプレゼントのようですね♪乾燥させた花のつぼみは、生薬としても使われているようです。でも!果実には毒があるので、絶対、口にいれたりしないでくださいね。

―えっ!!そうなんですか!以前の私だったら、誰かから「食べられよ」と言われたら、何の疑いもなく口にいれていたかもしれません・・・!!!!今だから思えるようになったんですが、色々なことに対して、自分で見て、感じて、考えていかないと、自分で自分の身を危険にさらすことになりかねないですね。

と、最後、自分に言い聞かせるように彼女は話してくれました。

社会の中で生きていくには、周囲の人と協力したり、歩を合わせて進んだりしていくのはとても大事なことです。しかし、自分の気持ちや考えを持たずに、もしくは、単にその方が楽だから、物事がスムーズにいくから、という理由で、周りの人達に迎合してしまうと、後々、自分自身が辛くなってしまうのではないでしょうか。でも、それも人生の勉強かもしれませんね。とはいっても、もしそうなってしまったら、屋外に出かけて、おもいっきりご自身の五感をフル活動させてみてください。何かしら、自然からの贈り物が届くのではないかと思います。それでも、まだ辛いなぁと感じたら、この森林散策カウンセリングにいらしてくださいね。
来月の彼女は、もっとご自身のことをお話ししてくれるかもしれません。森の中で、楽しみにお待ちしています!

ブログ執筆者
竹内啓恵 https://jumoku.co.jp/info/b201906-2/

~森のメモ~

(1)ソシンロウバイ ロウバイ科ロウバイ属
Chimonanthus praecox f.concolor
落葉広葉樹の低木。中国原産で、葉は全縁で対生。黄色い花が咲き、12月~2月に開花します。花の内側の花被が赤紫色を帯びるものが「ロウバイ」で、上記写真のように黄色いものが「ソシンロウバイ」と言います。種子に毒がありますが、花の蕾を乾燥させたものが「ロウバイカ」という生薬となり、頭痛、発熱、口の渇き、多汗の改善に用いられるようです。