冬の森を歩くと、落ち葉や霜柱から、「パリッ、シャリッ、クシャッ」、「ザクッ、ザクッ、ザクッ」といろいろな音が鳴り響きます。
新しい年が始まり、マスクと共に過ごす生活も2年近くになりました。
昨年、「今年はコロナで始まり、コロナで終わった年でした」と一年をふりかえった彼女は、今日で森歩きが最終回。異例続きの業務に見舞われ、疲れてやってきた最初の頃とはすっかり変わり、元気な姿になりました。この森の四季を通じて、さまざまなことを心の糧に過ごしてきたようです。早くも今日は、音を立てて歩き始めています。彼女が、最後に楽しむことはどんなものなのでしょう?
―「ザクッ、ザクッ、ザクッ」♪♪♪♪♪
と、彼女は音を立てながら、霜柱を踏み鳴らし、
―「クシャッ、パリッ、シャリッ」♪♪♪
と、力強く落ち葉を踏み歩いています。
―楽しい~~~♪
――こういう音を楽しめるのが、冬の醍醐味ですね。
―はい!懐かしいです・・・・・・・・・・・。こうやって、音を鳴らしながら、よく小学校まで歩いて行っていました。霜柱や落ち葉があるところを見つけて、わざわざ、その上を歩いて・・・(笑)、母親に、靴を汚したことを怒られていました(笑)。
――そうなんですね。
―こういうのって、子どもばかりが楽しむものだと思っていました。でも、大人になっても十分楽しいものですね!
――はい、この一年間にいろいろなことを楽しみましたね。
―はい!こういうちょっとしたワクワク感が、この一年、自分を元気にさせてくれてたんだなって、思います。一年前は、ほんとへとへとに疲れていて、「楽しむ」なんて言葉はありませんでした・・・。
実は、新型コロナウイルス感染症拡大防止の影響で、彼女の仕事は、日々のルーティンワークに加え、新たな業務が増えました。その日常は、目の前の仕事を片付けるだけで一日が終わり、またその翌日も同じことを繰り返すだけとなり、その状態が半年も続いたのです。「もう自分はだめかも・・・」と思ったそんな時、たまたま職場の掲示板で「森林散策カウンセリングで森へ!」という文字が目に入ったのでした。
―はじめは、気分転換のために、ここへ来ていました。でも、自然のことを色々と教えてもらい、それを子どもに戻った気分で楽しんでいくうちに、毎月一回、この森歩きを待ち遠しくなっていたことに気がつきました。
――まあ!待ち遠しくなっていたんですね。
―自然を味わいながら、自分のことや仕事のこと、そして職場のことについても話すようにもなって、それがまた、自分の気持ちをすっきりさせることができたんです。バタバタしている状況にも慌てなくなって、忙しくても頑張れるようになったというか・・・ちょっと距離を置いて物事を考えられるようなっていました。
――それは、大きな収穫ですね。
―最近では、森に来なくても、何気なく目にした自然から、この森や自分が話したことを思い出したりします。その時、今の自分がどうなっているのか、不思議と考えていたりして・・・そうすると、いつの間にか頭の中で整理し終わっているんです。
――日常にも生かされているんですね。
―そうみたいです。この一年、何度も感染の波が起こって、そのたびに仕事が忙しくなっていたんですけど・・・、今は毎日、楽しく過ごせるようになりました。同僚からは、「ずいぶん強くなったね」とまで言われるようになったんですよ!
と、語った彼女の声は活力に満ち、その表情は晴れやかで、生き生きとしていました。
世の中の状況は、まだまだ落ち着かないようです。ですが、このような状況下でも、彼女のように落ち着いて、生き生きと日々暮らすことができるのです。
わずかな時間でも、楽しいと思う体験は、自分自身を元気にさせてくれるのではないでしょうか。このような時間を作ると、忙しい環境のなかに置かれても、ふと、立ち止まって自分を見つめ直し、自然とバランスの良い生活を過ごしているのだと思います。
彼女は、森歩きを通して、さまざまな楽しみを得ることができました。彼女の奏でた音は、森から最後にもらった贈り物だったのかもしれません。きっとこの森歩きが終わっても、心の内で奏でられることでしょう♪
ブログ執筆者 竹内啓恵
https://jumoku.co.jp/info/b201906-2/
~森のメモ~
霜柱
土の中の水分が凍ってできた柱状のものです。