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- 孤立木（ケヤキ）
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- 株立ちした樹木（ケヤキ）
今日の彼女は、森歩きが3回目。新卒で入社して、今年で6年目を迎えました。5年間、仕事内容は変わらなかったようですが、コロナ前後の各3年間は仕事のスタイルが全く違ったそうです。それぞれに慣れるまでの時間はかかったものの、今は、難無く仕事をこなせるようになったと、前回、話してくれました。今日は、ちょっと浮かない表情でやってきた彼女。いったいどんなことを森で語ってくれるのでしょう。
―どんよりとした空模様だと、どんよりとした気持ちになりやすいんですかね・・・。
――気分が晴れないようですね。
―ん・・・、やっと仕事のペースもつかめて、仕事がだいぶ楽にできるようになってきたんですが・・・、それ以上に、将来のこととか、このままこの会社で仕事を続けていきたいのか・・・など、いろんなことを考えるようになってきちゃったんです・・・。
――いろんな思いが出て来たんですね。
―はい・・・、
と、彼女は自分の仕事について話し始めました。彼女の所属する部署は、ウェブサイトや商品広告などの広報活動を行っています。学生の頃から、この分野を勉強してきたのではなく、たまたま入社して配属された部署がこの分野だったそうです。そのため、最初は先輩が話す用語すら分からず、何を説明しているのかを理解できなくてずいぶん苦労したようですが、根気よく上司や先輩が教えてくれたおかげで、独りで仕事を任されるまでになりました。仕事をしていくうちに、構図やデザインを考えたり、喜ばれるものを作ったりすることに楽しみを見つけ、さらに良いものを作っていこうと勉強を始めると、お客さんや他部署からの評判が良くなって自信がついた、と力強く語ってくれました。ただ、今の仕事のスタイルに落ち着いたと思っていたところに、先日、来月から職場に出社して仕事をするように通達が来たと話してくれました。
―在宅での仕事の良さを覚えたら、別に会社で働かなくてもいいんじゃないか？と思い始めちゃったんです。会社以外の人とも仕事をやってみたいし、自分の知らない新しいことを学んでみたいし・・・、「会社」という枠に入らないで伸び伸びと働いてみたいなあ・・・なんて思うようにもなっちゃって・・・。
――なるほど・・・独立への道を考えるようになったんですね・・・。
―はい・・・。
――独立・・・ちょうど、あそこに見える一本のケヤキ（写真左）のような道ですね。周りに何もないせいか、四方に枝が伸びて、下枝も立派ですね。たくましくきれいな樹形になっていますよ。
―あ、あの木ですね。のびのびしてて、まさに今、いいなあと思っている感じです♪
――逆に、私たちがいるこっちのケヤキ（写真右）を見ると、株立ちしたり、複数の木で連なったりして、全体で一つの樹冠や樹形を作っているように見えますね。
―ほんとに！隣の木の方に枝が伸びていないですね。なんだか遠慮しているかのようにも見えます。気の遣い方が人間社会っぽいようにも見えて・・・。職場にいるような感じもしてきます（苦笑）。
――確かにそう見えますね。こちらの樹木の幹は、一本で立っている樹木に比べて細いですね。ただ細くても、台風や強風の時は、お互いに風を遮り合い、全体で風の荷重をカバーして持ち応えることができるので、全部の樹木が一気に倒れることは免れやすいんです。その一方で、向こうの孤立した樹木は、自分がしっかり立っていないと倒れてしまうため、幹は太く、たくさん張り出した枝同士で風の荷重を打ち消し合う工夫をしているんですよ。
―なるほど・・・・・・・。
と、彼女は考えこんでしまいました。それから、しばらく経った後に、
―ん。。。やっぱり、分からないです・・・自分がどうしていこうか・・・、まだ・・・結論が出せないです・・・。
――この森歩きで一緒に考えて行きましょう。
―はい・・・（笑）。ただ、いいなあって思ったことに向かって進むには、しっかりした土台づくりが必要なんですね。今、会社に所属している居心地の良さがあるから、こうやって考えられるようにもなったんだと・・・。これからですが、自分の将来を考えていこうと思います。
と、彼女はそう言って、歩き始めた時よりも、だいぶ晴れやかな表情になりました。
コロナによって、これまでの暮らし方や仕事の仕方が変った人は多いことと思います。彼女もその一人ですが、その変化を利用して仕事のスキルアップを図り、その成果を上げ、さらに、次の変化をきっかけに自分の将来について考え始めたところです。どのような道に進んでも一長一短ありますが、自分で、自分の道を、選んでいかないと、この先の道が開いていかないように思います。急がなくていいんです。あのケヤキの木々達が、いったいどれぐらいの年月をかけて、ここまでに至ったことか・・・。
これから、四季折々の自然を楽しみながら歩いていきましょうね。
ブログ執筆者 竹内啓恵
https://jumoku.co.jp/info/b201906-2/
～森のメモ～
（１）ケヤキ ニレ科ケヤキ属
Zelkova serrata
高木。本州～九州の温帯に自生します。山地～沿海の谷沿いや斜面、街路樹、公園樹、屋敷林にも見られます。扇形に広がり美しい樹形をしていることで、街路樹の並木道に植栽されることも多いです。材は硬くて頑丈なことから、建築材や家具材でも使われてきました。身近なものですと、お盆やお椀、和太鼓などにも使われています。