イロハモミジ(1)の葉と種子 コムラサキ(2)の葉と実 シラカシ(3)の葉とどんぐり
ようやく涼しさがやってきました。森の中に入れば、あちこちで秋の気配も感じられるようになりました。
今日、一緒に歩く彼女は、3人のお子さんのいる働くお母さんです。この春に、一番下の娘さんが高校生になり、そろそろ自分の好きな時間を持ちたいとお友達に相談したところ、この森林散策カウンセリングを紹介していただいたそうです。
この日は、5回目の森歩き。この森にも慣れたところで、いったいどんなことを彼女は感じるのでしょうか。
―やっと少し涼しくなってきましたね。
――本当にそうですね。
―森の中も、前よりヒンヤリしてきたようで、すっきりした気分になりますね・・・。あ~~~こういう時間が持てることに贅沢を感じます~。
――はい、今日もいい時間を過ごしていきましょう。
と、森の中を歩き始めました。するとすぐに、
―夏休みが始まってから、次男はずっと家に居たんですが、先日、長男が遅い夏休みを取って、家に帰ってきたんです。久しぶりに家族全員が揃ったんで、夫がいつも以上に嬉しくなっちゃったみたいで、急に、バーベキューをしようと言い出して・・・、だったら、私の両親や従妹たちにも声かけて、大勢でバーベキューをしようということになったんです。
――なるほど・・・。
―大勢の家族が揃うとすごい賑やかになって・・・、子ども達も、ああでもない、こうでもないって言いながら他愛ない会話が飛び交って、なんだか子ども達の小さかった頃が蘇ってきたんです。普段は、高校生の娘と私達しか家に居ないので・・・、あ~小っちゃかった時は、こうやって賑やかだったよなあ・・・と(笑)。
――お子さんの成長を感じられますね。
―はい、それぞれ大きくなったんだなって・・・。また、今回、3人の子ども達を見ていて、こんにもそれぞれの性格が違うものかなあとも感じました。
――そうなんですね。
―長男は、慎重な性格かと思っていたんですが、実は、次男よりも無鉄砲なところがあって、大学生の時、あんなに苦労して就職活動をして見つけた会社を、「なんか合わない」とか言い出したと思ったら、もう会社を辞めてて・・・夫とどうしたものかと話し合っていたら、もう次の会社に勤めていて・・・、頼もしいのか不真面目なのか心配になってくるし・・・次男は、逆に、そういう長男を見てきたせいか、「今から、手に職を付けるんだ」とか言って、大学の他に専門学校にも行き始めちゃって・・・、それはそれでそんなに詰め込んで大丈夫なのか?と思ったり・・・、末っ子は、二人の兄を冷静に見ているところがあって、何も言わないんですが、色々と考えているようで・・・。
――それぞれの性格が違うんですね。
―はい・・・。私も3人姉妹なんですが、両親もこうやって心配していたのかと思ったり。考えても仕方がないんですけどねえ・・・・・・・。
と、話しながら歩いていると、林道脇に実の生っている樹木が目に入ってきました。それに視線を向けていると、
―あ、紫色の実ですね!珍しい色ですね。
――はい、コムラサキという名前の樹木で、ムラサキシキブの仲間なんですよ。そして、こっちのシラカシには、ドングリが生っています。
―あ、ほんとですね♪ドングリは、地面に落ちているものだとばかり思っていましたけど・・・、確かに、まずは木に生るものですものね。
――そうなんです。それから、そのお隣にはイロハモミジの種子が葉っぱに付いていますよ。
―あっ、前見た時は、この種はまだ小さかったですよね。
――はい、その通りです。このプロベラのような羽は、風を利用して遠くまで飛んでいかれるようになっています。
―へぇ~種が風に運ばれて、飛んでいくんですね。
――はい。こっちのドングリは、熟した後、その重さで地面に落ちていきますが、そのまま、コロコロと転がって遠くに行くこともありますし、リスやネズミの食糧ストックとして運ばれ地面に埋められるんですよ。
―ということは、動物たちに食べられちゃうんですか?
――それが、意外と、埋めた場所を忘れる動物が多いようで、そこから芽が出ることも多いんです。また、こちらも動物なんですが、ここに美味しい実があるよ~と、鳥に分かるような目立つ色にしているんです。食べた後、遠くへ飛んでもらって、種を排出してもらい、新たな場所で成長していくことを狙っているんですよ。
―そうなんですね・・・・。羽ばたき方がそれぞれ違うんですね・・・・・・。
と、そう言った後、彼女はしばらく考え始めました・・・。そして、
―それぞれの性格にあった進み方でいいんですね・・・。
と、ひとこと呟き、何かを納得し始めたようでした。
子育てをしていると、いつしか自分の子どもは、自分と同じ考えや価値観を持って、人生を進んでいくのだと錯覚することはないでしょうか。しかし、往々にして、彼らはこちらの度肝を抜かす言動を起こし、自分の考えが思い違いだったという現実を平気で突きつけてきます。それでも、子ども達には苦労せず、なんとか幸せになってもらいたいと願うもので、要らない心配をしてしまいます。ですが、その子に合った進み方があれば、それはそれでいいのではないでしょうか。万が一、子ども達が何か困って弱音を吐いた時、また、助けを求めた時に、普通に帰って来られる場所を用意しておいてあげるだけで、彼らは安心して進んでいけるのだろうと思います。
これからあと半年、さらに森歩きを深く楽しんでいきましょう!
ブログ執筆者
竹内啓恵 https://jumoku.co.jp/info/b201906-2/
~森のメモ~
(1)イロハモミジ:ムクロジ科カエデ属 Acer plamatum
小高木~高木・落葉広葉樹。東北南部~九州の暖温帯に自生。カエデ類の代表的な種類です。秋になると、赤や黄に葉の色が変り、紅葉を楽しませてくれます。プロペラ形の実は、花が咲いた後、ピンク色の羽が付いたペアの種子になります。それが茶色になった秋のある日、風で飛ぶ前に亀裂が入り、1個ずつちぎれた後、回転しながら飛びだします。ぜひ、今のシーズンの楽しみ方を味わってみてください。 以前の森のメモ→2020.11月 https://jumoku.co.jp/info/b202011/
(2)コムラサキ シソ科ムラサキシキブ属 Callicarpa dichotoma
本州~九州の暖温帯に自生。庭木で植栽されていることが多いです。ムラサキシキブより葉が小さく、枝ぶりは整然としています。ムラサキシキブが平安時代の女流作家「紫式部」の名にかけたと言われるように、コムラサキは、平安時代の女流歌人「小式部内侍」にちなんで「小式部」とも呼ばれます。枝や実の付き方がそれぞれ異なり、コムラサキの方が枝は整然とし、実は密集しています。
以前の森のメモ→2020.9月 https://jumoku.co.jp/info/b202009/
(3)シラカシ ブナ科コナラ属 Quercus myrsinifolia
高木。東北南部~九州の温暖帯に自生。低地~山地に点在し、関東平野に多く見られます。シラカシより葉が細く、鋸歯は低いです。街路樹や公園樹、庭木に植栽されています。どんぐりは小ぶりですが、殻斗があります。