「心と身体の包括的産業保健サービス」 株式会社JUMOKU

　コアジサイ（１）

梅雨に入りましたね。それでも植物たちは、次から次へと花を咲かせていきます。
今日、一緒に歩く彼女は、2人のお嬢さんのいるお母さんです。毎日、食事に洗濯、掃除に子育てと、一日の大半を家族のために使っています。否応なしに、家の隅々から子どもの行動にまで、目が届いてしまうそうです。しかし、最近、娘から、「どうしてお母さんは毎日、家にばかりいるの？」と、イラついた口調で言われてしまい、何とも複雑な気持ちになってしまったそうです。
今日は、２回目の森歩き。どんな出会いが彼女を待ち受けているのでしょう。

――梅雨の季節になりましたね。

―毎日ジメジメして、洗濯物もなかなか乾かなくなりました。

――そうですね。

―でも、雨が降り続くのかと思っていれば、ぱあっと晴れる日もあって・・・、それはそれで嬉しいんですけれど、瞬く間に気温も上がり、その変化に体がついていきませんね。

――ほんとに、天気の移り変わりが毎日極端すぎますね。

と、お天気の話から始まり、話題は家族の話へと移っていきました。

―毎日、娘達が、小学校から帰る時間に合わせて、手作りのお菓子を作って待っているんです。以前は、喜んで食べてくれてたんですが、最近は、特に、上の子が家に帰って来ても、自分の部屋に入ればそれっきりで、夕飯まで顔を見せなくなってきたんです。なにか尋ねても、「べつに」っていう返事しか返ってこないし・・・。

――そうなんですね。

―なんかおかしいなあと思って気になり始めると、いろんな考えが浮かんできてしまって・・・・・・、具合が悪いんじゃないかしら？　学校で何かあったのかしら？とか、いじめられてるのかしら？　変なことやってないかしら？とか、考え出すと、いろんな妄想が浮かんできちゃって・・・居ても経ってもいられなくなって、つい、娘の部屋まで行って聞いてしまうんです。すると、案の定、嫌がられるんですよね。

――なるほど、嫌がられるんですね。

―そうなんです。まだ、下の子はそういう態度ではないんですが・・・。

と、娘さんの様子を話していると、目の前に白い花の群生（２）が現れてきました。

―まぁ、かわいい♪なんて可憐な花なんでしょう！

――可愛らしいですね。あの丸い塊の花をよ～く見てみると、実は、小さな花がたくさん集まっているんですよ～。

と、カウンセラーが答えると、彼女は花に近づいて覗き込みました。

―わぁ～ほんと♪たくさんの小さな花がありますね。なんて可愛らしいんでしょう。まるでブーケのようです♪

――可憐で、女性らしい雰囲気がありますね。

―はい♪思わず、結婚式の時のことを思い出しました（笑）。

――それは素敵ですね。

―ふふっ、恥ずかしいですね・・・・・・・・・・・・・・・・（笑）。そういえば、娘が今よりも小さかった時、結婚式の私の写真を見て、「ママ、お姫様みたいできれいだね」って言われたことがあったんですよ。今とは大違いですが！

――それは、嬉しくなる言葉ですね。きっと、お母さんの姿を見て、なんてきれいなんだろうと心底感じたんでしょうね。

―・・・そうなんですかね（笑）。当時は、自分の母が入院していた時で、結構大変だったんですよ。子どもが幼稚園に行っている時だったんですが、午前中は実家へ行って、両親の洗濯物や働いている父の食事を作ったり、午後は、幼稚園から帰ってきた子どもを連れて母がいる病院へ着替えを持って行ったりしていました。自宅にいる時間がほとんどなくて、逆に、今の方が娘達のためには時間をかけてはいるんですけど・・・、

と、彼女は話を止めて、考え込むように黙ってしまいました。それから、少し経って、

―確かに、あの時の方が娘達に手をかけていませんでした。でも、娘達は、明るく過ごしていたし、私にも「大丈夫？」と声をかけてくれたり、持てないのに、洗濯物を運ぼうと手伝ってくれようとしたり、何かとうまく回っていましたね。今は、娘のことばかりが頭にあって、手をかけているとかじゃなくて、むしろかけすぎてるのかもしれない・・・・です。娘も大きくなってきてますし・・・、だから、遠回しに「なぜ、毎日、家にばかりいるの？」と、私に言ったのかもしれません・・・・・・・・・・・・・・・はぁ～～～～自分自身を反省しますね。

と、一段トーンが下がった声で、彼女は話してくれました。

子どもは、何も見ていないようで、しっかり家の事情や家族のことを敏感に感じ取り、冷静に見ていますね。つくづく子どもの能力ってすごいなと思います。そして、親は子どもに手をかけていいんです。子どもを信頼し、親自身の軸がぶれずにいれば、その加減は自然に見えてくるのではないでしょうか。

これからの森歩きで、色々な出会いが待っていると思います。娘さん達が、ウェディング姿のお母さんをお姫様に例えるぐらいキラキラした姿を見つけたように、たくさんの楽しみを森の中で見つけていきましょうね。

 

ブログ執筆者　竹内啓恵
https://jumoku.co.jp/info/b201906-2/