少しずつ暖かくなり、自然に「外へ出かけてみようかな♪」と思える季節がやってきましたね。と同時に、この時期は、学校や職場において、さまざまな出会いや別れもありますね。
今日の彼女は転勤の多い業界で働いており、昨年の4月、同僚しか知り合いのいない場所に異動して来ました。少しでも職場以外に楽しみを見つけ、また、誰かに胸の内を明かせられればという思いで、この森歩き始めたのです。それから一年が過ぎ、今日で最終回となりました。来月から新しい部署への配属が決まり、また新たな出発が始まる彼女です。この一年、どんなことを森から受け取ってきたのでしょう?
―うゎーーー♪きれい!花が咲いている姿っていいですね!つぼみが膨らんでいくのを見ているだけでもウキウキしてましたけど、やっぱり花の姿は格別ですね。
――そうですね。ほんのりとピンク色にもなりましたしね。
―はい・・・・・、森歩きをするようになって気づいたんですが、場所によって木の形や花の咲く時期がちょっとずつ違いますよね。先日、4月から働く部署へ挨拶しに行ってきたんです。その職場にサクラの木を見つけてよく見たら、まだ花のつぼみは小さかったんですよ。
――なるほど、異動先はここより寒い地域なんですね。また、そこで気になる木も見つけて来たんですね。
―はい、そうなんです。でも、心配していたこともあって・・・。昨年、ここへ異動してきた時のように、また不安や緊張が現れるんじゃないかと思ってびくびくしていたんです。でも、そういった気持ちは全然感じなくて、逆に、落ち着いた気分でいられたし、ちゃんと眠れてもいるんです。
――なるほど!森歩きを始めた頃は、眠れていなかったですものね。
―そうなんです。誰も知らない土地に来て、どこへ買い物に行ったらいいかも分からず、仕事は誰に質問したらいいのかも分からなくて、不安と緊張の毎日でした。部署には研修でお世話になった先輩がいたんですが、研修の時とは全く違った形相で仕事をしていたので、声すらかけられず、ほんと!しんどかったです!
――そうでしたね。
―この土地にも職場にも慣れて、あ~これから自分の仕事を深められるぞ!と思った矢先にまた異動することになっちゃって・・・でも、次は大丈夫そうです。
――そうなんですね。
―さっきも話しましたが、今度の職場でサクラの木を見つけて、これからそのサクラの花が見られるかと思うと楽しみが出来たようで・・・、こう・・・友達が待ってくれているような感覚でもあり、寂しさを感じないんです。
――なるほど!
―毎月この森で、自然や木のことを教えてもらっているうちに、ここで見てきた木や自然のものが職場や自宅の周りにもあることに、去年の秋ぐらいから気づいたんです。そうしたら、毎日の生活に自分の楽しみが出来て、さらにそれらを見るようになってから、同じ木でも森の木と何が違うんだろう、とまで考えるようになったんです。また、天気の悪い時は、あの木はどうなっているんだろう、とか思ったりして・・・・・・、友達のことを考えているような、じんわりとあったかい気持ちになりました。
――ほっこりしますね。
―はい!新しい場所に行くのに不安がないと言えば嘘になりますが、今度の異動先を楽しみにしている気持ちもあります。以前、一緒に働いたことのある先輩がそこにもいるんですが、場所が違えば、同じ木でも何らかの違いがあるように、仕事が変われば、先輩の働き方も違うから、今度は自分がしんどくなることもなさそうです。
――それは大きな成長ですね。
―森の中では、話をしながら歩いているだけではなかったんですよね。知らないうちに自然のことを色々学んでいて、それは気がつかないうちに、自分の物の見方や考え方が変わるきっかけになっていたんだと思いました。これからは、一人でも頑張っていけそうです!
と、彼女は晴れ晴れとした表情で、力強く宣言してくれました。
毎月1回の森歩きで、目の前にある自然を理解するようになると、少しずつ、楽しみや親しみが増えていくのではないでしょうか。ただ、目の前にあるものをそのまま捉えると、時に、しんどくなることがあります。森の中で、森林散策カウンセラーと見て驚き、話して考え、受け止め悩んで、じっくり時間をかけて過ごしていくうちに、彼女のように、想像力と応用力がつき、日々の楽しみと自身の強さを得られるようになるのかもしれません。新天地でも色々な自然を楽しんでくださいね。
ブログ執筆者 竹内啓恵
https://jumoku.co.jp/info/b201906-2/
~森のメモ~
ソメイヨシノ バラ科サクラ属
Cerasus×yedoensis ‘Somei-yoshino’
落葉高木で、樹皮は暗灰色で、横向きのしわ(皮目)が特徴的です。ソメイヨシノはオオシマザクラとエドヒバンの雑種で、観賞用として全国各地で植栽されています。「サクラ」と言えば、「ソメイヨシノ」を思い浮かべる人が多いと思います。実は、森の中の「サクラ」は、「ソメイヨシノ」ではなく、「ヤマザクラ」が主流です。しかも群集では見られず、点在しています。