森からの話さないアプローチ

ケヤキに寄生するヤドリギ

 

樹木の葉っぱがすっかり落ちて、森の中からも青空を眺められるようになりました。すると、いままで見えなかったものが、ひょっこり姿を現わしたようなのです。
今日で森林散策カウンセリング最終回の彼女。ちょうど一年前の森歩きも、このような青空の下で始まりました。当初は、へとへとに疲れていた彼女でしたが、ゆっくりと歩き続けてきたこの森で、毎回、色々なお土産を受け取って帰ったようでした。さて、最後はどんな贈り物を手にしたのでしょう。
―今日もいいお天気ですね。

――はい、真っ青の空がきれいに見ますね!

と、カウンセラーは、空を見上げながら答えました。

―わっ。あの木に、ポンポン(1)玉のような丸いものがたくさん付いていますよ!クリスマスツリーみたい。

――まさに、クリスマスオーナメントですね♪

―素敵!

――あの丸いものは、「ヤドリギ(2)」という名前の植物なんですよ。実は、落葉広葉樹の樹の上に間借りして、生活しているんです。

―え、あそこに立っている木と、丸いものは違う種類なんですか?

――はい。どこかでヤドリギの実を食べた鳥が、この木に止まりフンをしたんです。その時、種も一緒に出て、枝にくっついたんです。そこから根を出し、樹皮の奥へと食い込んで成長したんです。ヤドリギは、勝手にケヤキの養分や水分をもらい、生きているんですよ。

―え!勝手に!

――はい、勝手に栄養分を横取りしています。つまり寄生しているんです。だけど、ヤドリギはなかなかの知恵者で、ケヤキの養分を全部奪ったりはしないんです。というのも、全部奪ってしまうと、自分の栄養源となるケヤキ自体を枯らしてしまって自分自身も生きていけなくなってしまうからです。ちゃんと自分の生活の場を確保するために、ケヤキを枯らさない程度で養分をもらっているんですね。

―ふ~~~ん。
生きていくための技をちゃんと心得ているんですね!
あんなにかわいい姿で、抜け目ないなー・・・・・。
・・・・・・あれっ?そもそもこのヤドリギは、前からありましたっけ?

――はい、実はあったんですよ。一年前も!

―あっ、そうか。葉っぱが落ちたから見つけられたんだ!

――ずーっと葉っぱに隠れていたんですね。

すると彼女は、まじまじとヤドリギを見つめながら、何かを見つけたようです。
そして、

―自分の癖もヤドリギのようだなって。
この一年で、「自分ってダメな人間なんだ」という思いに苦しまなくはなったんですけど、その考え方は、表に出なくなっただけで、消えていないんです。
ヤドリギも、実は今まで葉っぱに隠れて見えなかっただけで、そこにずっと居た。でも、その姿は、案外素敵でいいなって。そしたら自分の気持ちがふわっと軽くなったんです!
その癖があってこそ、自分なんだなって。

と、彼女は晴れ晴れとした表情で語ってくれました。

一年前も今日と同じように、幾つもの丸い形のヤドリギがケヤキの樹木に寄生していました。しかし、常に「自分ってダメな人間なんだ」という思いに苛まれてきた彼女の目には止まらず、話題にも上りませんでした。そんな彼女も、「クリスマスツリーみたい!」と表現するまでになり、ゆっくりと歩いた森の中で、色々なものを確実に受け取ってきたからなのだと思います。そして、今日見つけたヤドリギを自分の癖と重ね合わせた彼女は、その美しい姿に励まされ、それを自分らしさとして受け止めることができたのです。
12月という時期に相応しく、森はクリスマスプレゼントをよこしてくれたのですね。

 

ブログ執筆者 竹内啓恵
https://jumoku.co.jp/info/b201906-2/

 

~森のメモ~

(1) ポンポン
毛糸などで作った丸い球で、帽子・洋服や靴の飾りとするもの。応援団のチアガールなどが踊りながら打ち振る、大形のもの。「三省堂新明解国語辞典第7版」より

(2) ヤドリギ
Santalaceae Biscum 宿木
北海道~九州の温帯にやや稀。ブナ、ミズナラ、ケヤキ、エノキなどの落葉広葉樹上に寄生します。落葉のヤドリギもありますが、今回のヤドリギは常緑です。右の写真は球体になる前のヤドリギの枝と葉です。ヨーロッパでは、ヒイラギと共に、神聖な樹木としてクリスマスリースに使われます。