落葉した森で。

新緑の森の中(左)とその外観(右)

 

生命あふれる季節になりました。部屋の窓から、キラキラ輝く太陽の光を見ると、思わず外へ出て、体を動かしたくなる季節でもありますね。
今日の森歩きの彼女は、入社2年目の若手社員です。彼女が働く会社は、数年前から若手社員のメンタルヘルス研修の一環で、この森林散策カウンセリングの取り組みを始めました。彼女もその一人として、昨年末から始めています。5か月間の森歩きで、「自分は大人にならないと!」という言葉をよく言うことがありました。とはいえ、先月まで学生の雰囲気が残っていた彼女でしたが、今日は、社会人の風格がグッと現れたように感じます。さて、そんな彼女に、この森は何を語ってくれるのでしょう。

 

―ワアーーー。森がワサワサしてきましたね!先月までは、ガランとした感じだったのに・・・。   

――確かに。この1か月で森は、すっかり変わりましたね。

―わりと自然のある場所で過ごしてきたんですが、こうやって、木の葉っぱが変わっていくことを意識しながら、森を歩いたことはなかったです・・・・・・・。葉っぱと言えば・・・、高校生だった時の掃除当番を思い出します。一年を通して、学校の周りを、全学年で順番に掃除したんです。その順番が秋に回ってくると大変で!掃いても掃いても、葉っぱは全然減らないし、掃いた次の日にはまた前日と同じくらいの量が落ちてるし・・・。

――ずいぶん貴重な体験をしたんですね。

―はい。今となっては、いい思い出になりましたが(笑)・・・。でも・・・、毎年、いつの間にか葉っぱがなくなっていて、葉っぱがなくなったと思ったら、いつの間にか緑になっていて・・・、こんな風に木の変化を目のあたりにしことがなかったので、あらためて木って生きているんだな~って思いました。

――意識して、木の変化を見るようになったんですね。もう少し歩くと、この時期ならではの景色が見られるので、ちょっと行ってみましょう。

―はい!

と、2人はしばらく歩いた後、少し開けた場所に着きました。そこで、目の前の山を覗きこむと、

―うわっ。なんか・・・美味しそう!

――ん?美味しそう!?

―この森に緑が増えたら、フワフワのパウンドケーキのように見えちゃいました。

――なるほど!

―味は抹茶か、宇治茶か、んー――♪、日本茶系ですね(笑)。

――この景色を見て、美味しそうという発想が生まれたんですね!そう思って森を歩くと、ますますワクワクしてきますね・・・・♪。ところで、真ん中の濃い緑色の樹木は、スギ(1)という針葉樹(2)なんですよ(写真右)。秋に、多少、紅葉しますが、葉っぱが全部落ちることがないので、一年中緑色の景色を見ることができます。また、その両側の薄い緑色の樹木は広葉樹(3)です。これらは秋になると葉が紅葉し、その後、落葉します。冬になると枯れ木のように見えます。でも、春になるとこうやって葉っぱが出てくるので、はっきりと四季を感じることができます。ちょうど今、開葉したばかりなので、葉っぱが優しい柔らかい色になっていますね。

―木の種類が違うから、葉っぱの色も違っているんですね。

――はい。とはいえ、これから夏にかけて葉も成熟していくので、色は少しずつ濃くなっていきますよ。

―色の区別がつきにくくなるんですね。今だと・・・♪♪♪濃い方は抹茶味で、薄い方が緑茶味って感じです♪

――んんん!お茶の味が口の中で広がってくるようです。

―ありがとうございます。でも、もう少し大人になった発言をしたいんです。こういうことを人に言うと、「社会人のくせに・・・」とか言われたり、変な空気が流れたりして・・・治さないといけないな、と思うんです。

――そうなんですね。私には、言いたいことがとてもよく伝わってきますけどね。自分になかった発想ですし、想像力が膨らむと楽しい気持ちが増して嬉しいです。

―ありがとうございます。私も話をしていて、とても楽しいんです(笑)。姉や姉の子ども達とか、友達や友達の子ども達とかにも、こういう話をしても、ちゃんと分かってくれて、お互いに楽しいんです。

―――人にちゃんと伝わっていますね。今持っているその感性を大事にしてもらいたいなあと思います。

と、カウンセラーが言った後、彼女は何かを思い出しているようです。

―そういえば・・・、4月から自分の部署に新人社員が配属されてきたんです。その新入社員がものすごく緊張していたので、部長が場を和ませようと、私に話しかけて来たんです。私も、こういう調子で話をしていったら、カチンコチンだった新入社員の表情がとけ始め、最後は会話に参加してくれたんです。そうなんですよね・・・。「社会人のくせに・・・」って、人から言われると、落ち込むし、気にしちゃうんですけど・・・、考えてみれば、こうやって部署の雰囲気が和んだり、身近な友達や姉達からは批判されたりしたことはないですし、自分が楽しく居られるなら、これでいいんじゃないかと思いました!

と言って、彼女はさらに笑顔になりました。

森は、私たちから色々なものを引き出してくれます。ちょうど新緑の季節だったからこそ、彼女の感性がより引き出され、それをきっかけに「大人にならないと!」という思いは払拭されたようです。
毎月同じ森で、同じルートを歩きますが、毎回、森は異なった姿を私たちに見せ、毎回、新しいメッセージを伝えてくれます。だからこそ、1年という時間をかけて森の中を歩くことは、とても大切な時間なのだと感じます。それは、決してオンライン上では実現出来ないことなのです。オンサイトで、生身のカウンセラーと、リアルに、時間や空間を体感、共有し、対話を続けていくことで、若手社員のメンタルが強くなっていくのではないでしょうか。彼女の会社は、このことをよく理解しているのだと感じます。
後半の半年間も、色々なことを見つけていきましょうね。

 

ブログ執筆者 竹内啓恵
https://jumoku.co.jp/info/b201906-2/

~森のメモ~

(1)スギ ヒノキ科スギ属
Cryptomeria japonica
高木。本州~九州の低地~山地まで木材用に最も多く植林される木です。現在では、花粉症のスギ花粉で悪名高い樹木になってしまいましたが、日本古来の材であり、日本の林業で最も重要な樹種です。幹がまっすぐ伸びるので「直木(スキ)」と呼ばれ、それがなまったのが和名の由来と言われています。全国で見られる樹種ですが、各地域により多少特徴が異なります。これらの違いを見て歩くのも面白いですよ。

(2)針葉樹
樹木を葉の形態で分類した名称で、広葉樹に対応する用語です。スギ、ヒノキ、マツ、モミ、ツガ等、細くとがった葉を持った樹木のことを総称して言います。

(3)広葉樹
樹木を葉の形態で分類した名称で、針葉樹に対応する用語です。コナラ、クヌギ、ブナ、ケヤキ、アラカシ、シラカシ、シイ、クスノキ、ツバキ、ヒサカキ等、常緑樹、落葉樹関係なく扁平な葉を持った樹木のことを言います。