梅雨曇りの森のなかで

夏の森 樹木も毎日呼吸をしています。

夏の森 樹木も毎日呼吸をしています。

林冠の合間から見える青空

林冠の合間から見える青空

私たちは一年以上も、外出する時や自宅に誰かが尋ねて来た時など、必ずマスクを着けて行動することが当たり前になりました。ただ、冬ならまだしも、暑い今の時期に、口と鼻を覆って過ごすには、なんとも言えない息苦しさを感じているのではないでしょうか。
半年間、森を一緒に歩いてきた彼女。日ごろのストレスを森で解消していきたいということから、森林散策カウンセリングを始めました。いつもは明るい表情でやって来る彼女ですが、今日はなんだか浮かない表情です。しかも、肩には力まで入っているようです。
さて、彼女は、この森歩きでどのような体験をするのでしょう?

――・・・毎日、暑いですね。

―ほんとに・・・。はあーーーーー。

――大きなため息が出ましたね。

―先週、職場で理不尽なことがあってから、ずっとイライラしたまま収まらないんですよ!!

――それはしんどいですね。

―しかも、頭はぼーっとして息苦しいし、仕事ははかどらなかったんです・・・。

――そうでしたか。

―あの出来事を思い出すだけで、またイライラしてきます!!

と、彼女はそう言って、先週起こった職場での出来事を一気に話してくれました。そこで、

――ちょっと深呼吸をしてみませんか。

―深呼吸ですか?

――はい!深呼吸です。

カウンセラーの提案に、少し戸惑った様子の彼女でしたが、そのまま小さくうなずきました。

――あの木陰で、お互い距離を置いて背中合わせに立ちましょう。それからマスクを外して、なるべく顔を上げて数回大きく息を吸って、吐いてみましょう!

と、二人は森の中の異なる向きで、静かに深呼吸をし始めました。10回ほど繰り返した後、

―はぁーーーーっ、気持ちがいいですね。

――それは、とても良かったです。

―はじめは半信半疑のまま、息を吸って~、吐いて~って、繰り返していましたが、何回かやっているうちに、モヤモヤしていたものが体から消えていくような感じがしました。深呼吸が終わったころには、不思議と頭の中もすっきりしていて!・・・・・・・・ただ呼吸しただけなのに、気持ちはずいぶんと落ち着くものなんですね・・・。

と言った彼女は、自分の変化を味わっているようでした。そして、

―職場で嫌なことがあってストレスを感じたりすると、息を吸うこともうまくいかないんだなあと思いました。しかも、マスクをすることがすっかり染みついていただけに、そのことに気づきにくいなーって・・・。うまく呼吸ができなくなると、モヤモヤした気持ちはずっと続いてしまうものですね。

――毎日の生活にも影響がでてきますね。

―それだけに呼吸は大事なものなんですね。

――そうですね。ちなみに、目の前にある樹木もみんな、呼吸をしているんですよ。

―えっ?樹木も呼吸をしているんですか?

――はい。樹木は二酸化炭素を吸収して酸素を出しながら栄養を作る光合成(1)を行っていますが、酸素を吸って二酸化炭素を出す働きもしています。それは、生きていくために、吸収した酸素と光合成で作られた栄養を使って、エネルギーを作り出しているんです。

―ということは呼吸をしなければ、樹木は枯れてしまうんですね・・・私たちであれば、“生きていられない”、ということですね・・・・・・・・・・・・シンブルだけど、すごく大事なことかも!

と言った彼女の表情は、いつものような明るさをとり戻し、肩の力も自然に抜けていきました。

私たちは、健康であれば当たり前に呼吸をすることができます。それでも、ストレスを感じれば、浅い呼吸になりやすくなります。ましてや、一年以上も続くマスク着用のスタイルで、私たちの呼吸は浅くなりがちになっているのではないかと感じます。こうした今だからこそ、ときどき深く呼吸することは必要なのではないでしょうか。おそらく、今日の彼女は、このシンプルで大事な要素を、森で味わったのだと思います。
これからの森歩きでも、一緒に美味しい空気を楽しんでいきましょうね。

 

ブログ執筆者 竹内啓恵
https://jumoku.co.jp/info/b201906-2/

 

~森のメモ~

(1) 光合成
樹木や植物が大気中の二酸化炭素(CO2)を葉から吸収し、また根から吸収した水とともに太陽エネルギー(陽光)を利用して炭水化物を合成する同化作用です。同化とは、エネルギーを吸収して、無機物を有機物にすることと、対外からとり入れた物質を必要な物質に再合成することです。