森からの話さないアプローチ

マンサクの株立ち

マンサクの花

彼女たちと毎月1回、森の中を歩いていくと、彼女たちの語る言葉にちょっとずつ変化が現れていきます。それらは、その時の彼女たちの状況を反映していることもあり、ハラハラさせられることがあります。その一方で、森林散策カウンセリングが終盤に近づくにつれ、彼女たちの表現にワクワクさせられるようになり、自分の道を探し当てたのだなと実感するようになります。

今日で、彼女との森林散策カウンセリングが最終回。一年間、涙あり、笑いありと、色々なことを森の中で話し、一緒に同じ時を過ごしてきました。

―あ、黄色いもの発見!

――お!どこにですか?

―あの木です!

地面から木がたくさん伸びている・・・、
なんというか、鳥が羽を広げて、今にも大空へ飛び立っていきそうに見える木です。

――鳥が羽を広げて、今にも飛び立っていきそう?

と、彼女の言葉を繰り返し言いながら、心の中でじ~んと来ています!
「これから飛び立っていくのですね!最終回にふさわしく、なんと素敵な表現なんでしょう!!」と。


-はい。その羽の先端に黄色いものが見えます。

と、続いて私のこころの中では、「しかも『枝先』を『羽の先端』と表現するとは、まるで詩人のよう」と、感動中です。


――あ、あの株立ち(1)している木ですね。見に行きましょう!

・・・・・・・(近づいていくと)・・・・・・・

―わぁー花だったんだ。


――これは、「マンサク(2)」という樹木の花ですよ。


―イソギンチャクのような、星のような、面白い形だけど、かわいい~!


――本当、可愛らしいですね。

この花の名前は、冬を越して、どの花よりも「真っ先に咲く」ということから「マンサク」と付けられたという説があるんですよ。

―へぇ・・・・。


――言いかえれば、春の訪れを真っ先に教えてくれる花でもあり、今日一番に、この花を見つけられたということは、私には、新しい自分の道を、しっかり歩き始めたということが伝わってきましたよ。森が、今日という門出をお祝いしてくれているようですね。


-・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

と、彼女は私の言葉に耳を傾け、静かに、その場に立ち止まりました。
そしてだまったまま、じーっと黄色い花を見つめ始めました。
彼女の眼差しから、これまでの一年をいろいろ思い出しているかのように見えました。
と同時に、これから出発する新しい道への決意表明をしているかのようにも見えました。

そして、たくさん、私の心にも響いてくるものがあります。
これまで本当に頑張ってきましたね。この一年、自分自身と向き合うという作業は、森の中であろうと決して楽しいことばかりではなかったですもんね。
苦しんできた辛さと、これから出発する自分自身への決意が、十分伝わってきますよ。

森は、毎月1回、森の中を歩いてきた彼女をちゃんとみてくれています。彼女の語る言葉にハラハラさせられ、彼女の表現にワクワクさせられます。だからこそ、1年間頑張ってきた彼女に、マンサクという花の贈り物をしてくれたのでしょう。彼女は、それに気づけ、森林散策カウンセラーは、その贈り物の意味を、言葉として彼女に伝える役割を担うことができました。これぞ、嬉しい瞬間です。

 

~森のメモ~

1)株立ち
樹木の幹が、一つの株(根元)から分かれて伸びているさま

2)マンサク:マンサク科マンサク属
Hamamelis japonica
小高木~低木。本州~九州の礼温帯に自生。マンサクの花びらは細長い形状で黄色く、ガクは赤いです。和名は、早春の山中で他の木より早く「先ず咲く」「真っ先に咲く」からの転訛(てんか)説と「豊年満作」からの両説があると言われています。