こがね色のイチョウと黄葉中のイチョウ
12月になると、すべての落葉広葉樹の葉が散ってしまったと思う人は多いのではないでしょうか。しかし、都市部の樹木には、まだまだ落葉中だったり、遅いものでは、黄葉の際中だったりしているものがあります。
さて、今日の彼女は、4回目の森歩き。自然が好きで、この環境と絡めた仕事をこれからしていきたいと思っているそうです。ただ、どこから手を付けていけばいいのか分からず、モヤモヤした気持ちだけが強くなっていくばかりで・・・ということから森林散策カウンセリングを始めたようです。
さて、そんな彼女に、森はどのようなメッセージを伝えてくれるのでしょう。
―今日は、全てが黄色ですね。
――本当ですね。
―葉っぱは、すっかり無くなっちゃっているかと思って来たので、予想外の様子に、少し驚きました。
――それは、嬉しい驚きになりましたね。
―はい♪
輝く黄金色の森を歩き始めた後、背の低い黄葉しかかっているイチョウの前にカウンセラーは、立ち止まりました。すると、
―あっ!かわいい~♪
――何でしょう?
―はい!これを見てください。
と言って、目の前のイチョウの葉を指さしました。
―この緑と黄色の色合いが、ちょうどフリルのワンピースやブラウスの襟のようで、かわいいなあと思いました。
――なるほど!女の子が着ていそうなデザインですね。
―はい!(笑)。母は洋裁が上手で、小さい頃よく、ぬいぐるみやお人形のドレスを作ってくれました。その中のデザインに、この葉っぱのフチに似たフリフリのワンピースがあったなーってことを思い出しました。普段は、思い出すことなんてないんですけど・・・、この葉っぱを見ていたら・・・。
――懐かしいですね。
―ほんとに懐かしいです(笑)。自分も母の影響で、子どもの頃は手芸が好きだったんです。
――ご自身も好きだったんですね!
―そうでした・・・。すっかり忘れてましたが、いろんなことが甦ってきます。
彼女はそう言って、イチョウの葉をじっくり眺め始めました。そして、どれぐらいの時間が経ったでしょう、しばらくしてから、
――自然が好きだから、自然と絡めた仕事をしたいと思っていたんですが・・・、なんかそれとは違うような気がしてきました・・・・。子どもの頃、私が手芸を好きだったのは、自分が作ったものを友達にあげた時に、友達がとても喜んでくれたんです。そのこと自体がとても嬉しくて・・・・・・。今になって思えば、だから手芸を好きになったんだと思いました。でも、それは手芸じゃなくもよかったんですよね・・・。そのこと自体をすっかり忘れていたんですもん。単純に、私は・・・、人に喜んでもらえることをやりたいんだと思いました。
―なるほど、人に喜んでもらえることをしたいんですね!
――じゃあ、具体的に何を?っていうところまでは・・・まだ分からないんですが・・・(笑)。それでも、長年のモヤモヤが、なんか減ったような気がします。
と、彼女は、嬉しそうに話してくれました。
一年を通して、森は、毎回、異なるメッセージを彼女達に伝えてくれます。それも、訪れる場所や時期が違うのに、ほどよいメッセージを、適当なタイミングで伝えてくれます。
今日の彼女は、「自然が好きだから」という気持ちで始めた森歩き。イチョウの葉が緑色だけだった時には意識していなかった自分の気持ちを、たまたまこの時期に、この森を歩いたことで、小さい頃のエピソードや感情が甦ったようです。すると、本当にやりたいと思っていたことにも気が付いたようです。森は、ちゃんと応援してくれますね。
これから、冬の寒さがますます厳しくなっていきます。それも含めて、楽しみながら、一緒に見つけていきましょうね。
ブログ執筆者 竹内啓恵
https://jumoku.co.jp/info/b201906-2/
~森のメモ~
(1)イチョウ イチョウ科イチョウ属
Ginkgo biloba
落葉高木。「生きている化石」と言われるほど、太古から変わらない葉の形が変わっていないと言われています。葉は落葉しますが、広葉樹ではなく、そして、裸子植物ですが、針葉樹でもない特殊な樹木です。イチョウ並木だったり、東京都や大阪市のシンボルツリーだったりと、イチョウは身近な存在ですね。黄金に輝く街路樹は、秋の風物詩ともなっています。