「心と身体の包括的産業保健サービス」 株式会社JUMOKU

色鮮やかな秋の森（写真左・中）とコハウチワカエデの樹冠（写真右）

色鮮やかな森の季節となりました。朝早い電車には、荷物を背負って、山や森へ出かけていく人々の姿を見かけるようになりましたね。
今日の彼女は、二人の小さなお子さんのいる専業主婦です。コロナの影響で、ここ数年、家族や友人達と外出することがなくなり、気分の晴れない日が多くなっていったそうです。つい、子どもにもキツく言ってしまうことが増えたと自覚してきた頃、たまたま窓に映った自分の形相を見て、ギョッとしてしまったようです。このままではまずいと思い、この森林散策カウンセリングを始められました。
この森で、春と夏を歩き、今日がちょうど折り返し時期。秋の森は、彼女にどんなことを伝えてくれるのでしょう。

―うゎ～・・・・・・・。すごいきれいですね～（驚）。

――ガラッと雰囲気が変わりましたね。

―うゎ～、こんなにも森は変わってしまうのかと・・・、劇的な変化に驚きました・・・。

――ほんとですね。

―今まで・・・、秋と言えば、冬に向かってだんだんと寒くなっていくし、明るい昼間の時間は短くなっていくしで、もの悲しさと何か焦る気持ちが入り混じって、正直、それほど好きじゃなかったんです・・・。

――そうなんですね。

―紅葉狩りのイベントは知っていますが、どうして、わざわざ寒くなる季節に、人は外出していくんだろうと、不思議でたまりませんでした。でも・・・、今日、ここを歩いてみて、秋に出かけていく人達の気持ちが分かったような気がします（笑）。こんなにも！森の中が色とりどりに変わり、明るく、綺麗だったなんて・・・・・・、今まで、この景色を知らなかった自分は、なんてもったいないことをしていたんだろう！と思いました・・・・・・。

と言った彼女は、森の美しさに圧倒されたまま、何も語らず歩き続けました。
そして、しばらく経った後、自分自身について語り始めました。

―私は、歌を歌うことと本を読むことが好きなんです。

――そうなんですね。

―コロナが始まる前は、よく家族や友人とカラオケボックスに行って、歌を歌って過ごすことが多かったんです。でも、コロナが始まってからは、歌う時の飛沫について取り沙汰されてようになって、カラオケをしなくなったんです。でも、読書は、そういうことを気にせず、時間があれば、いつでもどこでも、一人でできるので問題はないんですが・・・・・・、本を読むって、実は、自分とも向き合いながら行っていることが多くて、本の内容によっては気持ちが晴れなくなることがあるんですよ。だから、歌を歌うと、バランスもちょうど取れて良かったんですよね・・・。

――二つの趣味がいい具合に合っていたんですね。

―はい・・・、ここ数年どうしたら気持ちを外に出せるかと考えていたんです。この森歩きを始めようと思った時には分からなかったんですが、半年間ここを歩いてみて、歩き終わった後の気分が、カラオケをした後の気分に何か似てるなって思えたんです（笑）。あ～森を歩くことで、自分の気分が外に向いて、気持ちが吐き出されていたんだなって・・・。

――ストレス発散になっていたんですね。

―はい！だから、まだこういう状況下において、森歩きはすごく助かっています。子ども達にも大声を出す回数が減ってきたような気がします（笑）。自然を好きになれたし、今日なんて、子ども達と一緒に歩きたいなって思いました。

と、彼女は満面の笑みで話してくれました。

この数年のパンデミックは、色々なところで、さまざまな人達に、多大な影響を及ぼしてきたことを痛感します。しかし、その一方で、森や自然に興味を持っていなかった人達が、このパンデミックをきっかけに、自然の魅力を発見したり、新たなストレス発散場所として森に出かけたりすることで、ぐっと自然が身近な存在になってきたことも感じます。

それにしても、秋の森を歩くと、毎年、色鮮やかな美しさに圧倒され、言葉が出なくなる彼女達に出会います。自然の織り成す変化に癒され、そして、励まされ、笑顔になっていくようです。毎日、自然とかけ離れた生活をしていても、彼女達の感性には、ちゃんと響くのですね。
これから寒くなりますが、澄んだ空気の森を楽しんでいきましょうね。

ブログ執筆者　竹内啓恵
https://jumoku.co.jp/info/b201906-2/