まだ暑い日も続きますが、森の中を歩くと、秋の気配を感じる季節になってきました。
今日で、森歩きが8回目になる彼女は、すっかりこの森に馴染んだようです。彼女は、特に大きな問題を抱えていたわけではなく、このコロナ禍で、なかなか友人や同僚と外食することができず、時間だけがこのまま過ぎていくことに虚しさを感じて、この森林散策カウンセリングを始めました。毎回、何かしら森で発見していく彼女。今日は、どんなことを見つけるのでしょう。
――先月に比べると、だいぶ風は冷たくなりましたね。
―本当ですね。先月は、森の緑がずいぶん濃くなったなって思いましたけど、今日はその逆で、ずいぶん色あせたなって思いました。
――この緑の微妙な色の変化に気づかれたんですね。
―あぁ!!そう言われてみると、確かにそうですね!特に意識していなかったんですが、この森を歩き始めた頃は、季節が変化していくことってどういうことなのか、今一つわからなかったんです。以前、バスツアーで紅葉狩りに行ったことがあったんですが、赤く紅葉した葉っぱや黄色く色づいた葉っぱを見て、すごくきれいだなあ~と思いましたし、あ~自然っていいなあ~なんて・・・。でも、実際は、葉っぱが変化していく過程や、変化する前の葉っぱを見たわけではなくて、ただ、紅葉した葉っぱを見ただけなので、今ひとつ自分の中でピンと来るものがなかったんです。こうやって、毎月同じ森を訪れていると、前回歩いた時の森や、もうちょっと前に歩いた時の春や冬の森などが思い出されて、自然と、自然の変化に気づかされるように思います。
――なるほど・・・。自然の変化に気づかされるんですね。
―あまり強制的じゃなくて、なんか・・・・、森に話しかけられているような感じで(笑)。
――森が、お話ししてくれているんですね。
―ハハッ♪絵本の世界みたいですね!
と、このまま森の中を歩いていくと・・・
―あ!パンケーキがこんなところに!!!美味しそう♪
――本当!パンケーキのようですね。
―子どもの時に読んだ「ぐりとぐら」(※)の世界にいるみたい。ぐりとぐらの仲間達は、このパンケーキの匂いに誘われて、たくさんやってくるんです。私も、その一員になった気分です。ぐりとぐらが作ってくれたのかもって想像すると嬉しいなあ。あのパンケーキってとにかく美味しそうで、何度か母親にお願いして作ってもらった記憶があります。
――ほんわかするいい思い出ですね。このパンケーキに見えるものは、実はキノコですよ。私自身、キノコの専門ではないので、このキノコの名前や分類が分かりませんが、キノコの種類はたくさんあります。今、言えることは、毒があるキノコも多いので、見つけても、むやみに触らず、近すぎない距離で楽しんでもらえたらと思います。
―そうなんですね。きのこってお菓子もあるし、キャラクターとしてもかいわいいし、つい触っちゃいそうですね。気を付けます・・・・・・・・・、森の中には、色々なものがありますね。今日は、子どもの頃の夢が叶ったような体験ができました。また、明日からの仕事を頑張れそうです。
と、彼女は元気になって帰っていきました。
最近、この森歩きを始める彼女達は、これまでそれほど自然に興味を持っていなかったタイプの方々が多かったように感じます。コロナ禍という社会状況になってから、家や室内に籠りがちだったり、人と接する機会が減ったりしているせいか、森林散策カウンセリングを始める人が増えたように思います。人と対話し、交流する喜びや、森の中で発見する自然の楽しみ、そして、これらを通じて、自身に対する新たな側面や気づきを毎回得るようです。皆さん、特に、大きな問題や悩みを抱えているわけではないのですが、この森歩きを楽しみながら、自分自身を成長させていっているように感じます。頼もしいです。来月は、秋本番です。楽しみですね!
ブログ執筆者 竹内啓恵
https://jumoku.co.jp/info/b201906-2/
~森のメモ~
※ぐりとぐら
なかがわえりこ作 おおむらゆりこ(絵)1967 福音館書店(1967)
お料理することと食べることが好きな野ねずみのぐりとぐらが、森で大きな卵を見つけ、その場にフライパンを持ってきてカステラ(パンケーキではない!)を作るお話です。世界中の子どもたちに読み継がれている絵本です。