毎月1回の森林散策カウンセリングは、時おり何も話さず、森の様子に身をゆだねて、ゆっくり、ゆっくり、森の中を歩くこともあります。
森林散策カウンセリングを始めて今日で3回目の彼女。前回のセッションをお休みしたので、2か月ぶりに森の中を歩きます。すっかり秋の装いにあたりは変身し、さまざまに色づいた葉っぱが舞い始めてきました。
――この2か月間、いかがでしたか?
―・・・あまりの突然で・・・、
悲しいはずなんですけど、そういう気持ちが湧かないというか・・・、
と、彼女は話し始めました。
時に私たちは、大切な人との別れを経験することがあります。
先月、彼女もその経験をしたばかりでした。
―本当に元気で、前の日にも会ったばかりだったので、
いまだに信じられなくて・・・
と、彼女が最後に大切な人と会った日のことから、幼少期、そして今に至るまでの思い出を息つく暇もなく話し、その姿に深い悲しみを感ぜずにいられませんでした。
そして、その言葉が途切れた時、
――あ!葉っぱがひらひらと落ちてきましたよ。もう、秋の季節になってきたんですね。
と、声がけしてみました。
すると、彼女は立ち止まり、しばらく森の中を見上げ始めました。
―・・・・・・・・いつのまに・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・とっても、黄葉がきれい・・・。
と、つぶやき、さっきまでと逆に、何も言葉なく、終了時まで歩き続けました。
―やっぱり来て良かった。自分にも、まだきれいだなと感じる気持ちが残ってたんだと思いました。どんな状況になっても、そういう気持ちって感じられるものなんですね。でも、きれいだなって感じられる自分がいたんだと思うと、・・・少し、ほっとしました。
あ、良かったあ。本当に良かったあ、と心の中で叫びます。
季節が秋になったということにも気づかないほど、気を張り続けていた彼女。
少しでも、その気持ちがほぐれたと思うと、私もほっとします。
来月も、これまでと変わらず待っていますね。
時おり、森に身をゆだねて、何も話さず、ゆっくりと歩くことで気持ちは落ち着き、一方で、感情が静かに揺り動かされることが起こります。この「森からの静かなことばかけ」こそが、森林散策カウンセリングの重要な技法の構成要素だと思います。
~森のメモ~
(1) 樹幹 「じゅかん」と言い、樹木の上部の枝や葉の部分のことです