彼女とは、今日が2回目の森林散策カウンセリング。自分自身と向き合うには、まだ戸惑いを感じる時期だと感じます。でも、このような時期、森は、ときどき助け舟を出してくれるのです。
――その時の気持ちを、もう少し具体的に教えてくれますか?
―んー具体的に・・・・ですね・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
沈黙に入った彼女は、考えているというより、混乱している様子が伝わってきます。
えーと、今日、目につきやすいものはどれかなあ、と心の中でつぶやきながら、さっと森を見渡します。それから、少し彼女の方へ体を傾け、彼女の足元の方へ視線を向けてみます。
すると、
―あっ!懐かしい~。イチゴだ~。
と、彼女は嬉しそうに叫びました。
――よく見つけましたね。
―昔はよく、小学校の帰りとかに、友達と見つけて採ってたなあ。最近は全然見なくなっちゃったけど。
と彼女はしゃがんで、小学校時代の思い出を懐かしそうに語り始めました。
良かったあ!と、ほっと胸をなでおろします。
あのまま彼女が自分を追い込んでいったら、どうしようかとドキドキしたけれど、ちゃーんと森からの助け舟をつかんで、話を自然と切り替えることができたあ!
こういう場面に出会うと、森林散策カウンセリングならではの手応えを感じて嬉しくなってしまいます。
それともう一つ!
あのヘビイチゴがまだ「黄色い花」の頃だったら、彼女は気がついたかなあ?と想像します。そう、今日という日の、森からの「計らい」に、嬉しさを感じせずにいられなくなるのです。だってだって、「赤色の実」の方が「黄色い花」より、断然、目立つから!
彼女との森林散策カウンセリングは始まったばかり。
森の中で、これから彼女はどのような発見をして、どのように感じていくのかと、考えるだけで、ワクワクします。一緒に森の中を歩いていきましょうね。
~森のメモ~
ヘビイチゴ バラ科
学名:Potentilla hebiichigo
大きさは、5~10㎝ほど。花期は、4~6月。
日当たりの良い湿った場所に多い多年草。日本全土に分布。「蛇苺」の名前は、「ヘビが食べるイチゴだから」、「蛇がいるような湿った場所に咲くから」という説がありますが、はっきりしていません。実際、蛇は果実を食べないそうです。
毒はありませんが、人間が食べても、それほど美味しさは感じません。