森のひっそりとした目映さ(まばゆさ)

この森林散策カウンセリングに訪れてる彼女たちは、私に初めて会った時、「自然が好きなので」と話してくれます。その自然が好きなことに、自然を知ることを加えると、自然の楽しみ方が変わってきます。今回の彼女も、「とっても自然が好きで、森の中でどんなものと出会えるのか、楽しみにして来ました」と、初回に話してくれました。
その彼女と今日は、2回目の森林散策カウンセリング。明るく「こんにちは」と挨拶して、森を歩いていると、彼女は少しずつうつむき加減になり、浮かない表情で、何かを考えている様子になっていきました。

 

――だいぶ春めいてきましたね~。
ほら、木々のてっぺんが赤くなっていて、樹木が芽吹いてきていますよ。

―あっ!・・・。あー、あれですか!
枝先が赤っぽいような、何かツンツンとしたものが出てるような。

――はい、その通りです。今日は、ちょっと、空を見上げて、というか、顔を上げて木のてっぺんを見ることを意識しながら、歩いてみませんか?

―はい。顔を見上げてですね~。
・・・そういわれてみると、下ばっかり今日は見てたかも。

――なるほど!
では、足元にも気を付けてくださいね。

 

と、彼女は、上を見上げて、色々な方向を見上げながら歩きはじめました。

 

―あれ!もしかして、あれ!? 鳥の巣じゃありませんか?

――どれ、どれ?・・・うわー!鳥の巣ですよ!

―初めて、自分で!鳥の巣を見つけました!

――すご~い!

―上を見上げて歩いていたからですかね♪

――森からの素敵なプレゼントをもらっちゃいましたね。

―嬉しい~。
主人にも教えてあげたいなー・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今朝・・・主人と喧嘩してきちゃって・・・・、つい、言い過ぎるというか・・・
もっと気持ちに余裕を持ちたいというか・・・

 

と、彼女は今朝の出来事をきっかけに、自分自身の悩みを話し始めました。
そして、ひととおり話した後、

 

――実はこの時期に、ぜひ見てもらいたい花があるんですよ。これです。

―ん?どれですか?

――この緑色の木の裏にあるんですよ。ほら、これです。

―うゎー、ほんとうだー!!とっても小さくて、目立ってない。
けど、かわいい~。

――これは、「ヒサカキ(注)」という名前の樹木で、一年中葉っぱが付いている樹木なんです。この時期に花が咲くんですが、葉の裏に花があるので、こう歩いていても、注意してみないと気が付かないんですよ。

―はい、教えてもらうまで、私も全く気づきませんでした。
(彼女は辺りを見回して)もしかして、ここも?あれ?あそこで咲いてるのも、そうですか?

――そうですよ~。一瞬で目が慣れましたね♪

―目が慣れると、たくさん咲いていることがわかります。うわ~かわいい。
誰にも気づかれないけど、こんなにも立派に咲いていて、
健気というか、ひたむきというか・・・、
なんか勇気づけられるというか、
頑張ろう!という気持ちにさせられます。

――この花から色々なメッセージをもらいましたね。

―なんか、じ~んときます。実はここ、お花畑になっていたんですね。

――これも森からのプレゼントですね!

―自然が好きだったけど、色々なことを知ると、わくわくします~。主人にも教えてあげたいな~♪

 

と言った彼女は、歩き始めた頃とは別人のように、表情が明るく、晴れやかな気分になっていったことが伝わってきました。

彼女がヒサカキの花を見て言った言葉、「誰にも気づかれないけど、こんなにも立派に咲いていて、健気というか、ひたむきというか・・・、なんか勇気づけられるというか、頑張ろうという気持ちにさせられます」という言葉に、私もじ~んとくるものがありました。仕事と家庭とを両立する中で、時に理不尽で、納得できないこともあるのだろうなあと。その中で、誰にも気づかれないけれど、健気でひたむきに咲く花の姿に自分自身を重ね合わせ、勇気づけられたのだろうなあ、と。これから一緒にお話していきましょうね。

森林散策カウンセリングは、リフレッシュすることや、話をすることだけでなく、自然の在り方を森林散策カウンセラーの言葉で伝えることで、じ~んと心に響くのです。だから、自然の楽しみ方に深みが増して、自分の大切な人と思わず共有したくもなるのです。

~森のメモ~

ヒサカキ:サカキ科ヒサカキ属
Eurya japonica
小高木~低木・常緑樹。本州~沖縄の暖温帯に自生。常緑樹 身近な山に生え、神社や公園に植栽されます。東日本には、神事に供えるサカキが少ないため、その代用に神事に使われます。